はじめに
2023年8月に開催された,名古屋テレビ主催 SF プロトタイピングハッカソン『ElectricSheep』に参加した記録をまとめる。> チーム「ガジェホコ」にハードウェアエンジニアとして参加した。
SFプロトタイピングハッカソン ElectricSheep
概要
名古屋テレビの主催するハッカソン。 「SF プロトタイピング」とあるとおり,大会全体の大テーマとして,『独自の SF 世界を空想し,その世界にあるであろうアイテムを作る』が掲げられている。 また,全国から募集されたランダムメンバーで構成される3チームに加え,地元名古屋の大学から1チームの計4チームにそれぞれ違うテーマが与えられている。 テーマは以下の通り,
-
モビリティ×ビッグデータ×Fan
自動運転が当たり前になった30年後。 全てのモビリティがつながりあい、あらゆる記録がビッグデータとして蓄積され、活用されるミライ。 現在「モビリティ×ビッグデータ」がもたらす未来は「便利・快適」をかなえる使い道は十分に想像されています。しかし、人を熱狂させる、あるいは人にとってのかけがえのない存在となる、そんな「Fan」な未来を実現させる使い方がきっとあるはずです。 「モビリティ×ビッグデータ×Fan」をかなえる未来のサービス・製品を考えてください。 – 全国学生対抗SFプロトタイピング ハッカソン
-
ミライの職業
30年前にYouTuberという職業が無かったように、30年先にはきっと今はない新しい職業が生まれているはず。 その「新しい職業」を想像してください。 その職業はどんな「価値」を提供しどんな「課題」を解決するのでしょうか? そして、その職業にはどんな「働き甲斐」があるのでしょうか? 「職業」を考えることは、世の中がどのように変化し、人が何に幸せを感じるようになるかを考えることでもあります。 30年後、皆さんは40,50代。社会の中核を担う世代です。 どんな職業があったら明るい未来が実現するか自由な発想で考えてみてください。 そして、ハッカソン本選の2日間で、「その職業に使われるであろうアイテム」をアプリ、Web、ガジェットなどの形でアウトプットしてください。 – 全国学生対抗SFプロトタイピング ハッカソン
-
ミライのエンタメガジェット(電子工作必須)
Entertainmentの由来は、「人の心をつかんで離さないこと」。 30年後、自動コンテンツ生成機能や高精度なレコメンド機能が更に発達し、一人一人が好きなコンテンツをそれぞれ楽しめるようになったミライ。しかし、そんな世界でもみんなが感動する、みんなが爆笑するような普遍的な「エンタメ」があるはず。 そんな、「人の心をつかんで離さない」エンタメガジェットを考えてください。 – 全国学生対抗SFプロトタイピング ハッカソン
-
ミライの名古屋
HP に掲載がないが,30年後の名古屋がテーマ。
スケジュール
スケジュールは以下の通りだった。
- 8/ 4:参加者事前 MTG
- 8/22:集合(0日目)
- 8/23:本番(1日目)
- 8/24:本番(2日目)
(以下,0日目などの表現を使います)
その他
面白い点として,各チームに5万円の開発支援金が与えられる。 この予算内でハードウェアやソフトウェアを製作する。 (金もらってもの作れるの最高じゃん)
開発したもの
私のチームはミライのエンタメガジェットであった。 以下,開発したものについて紹介する。
年表
「ミライのエンタメガジェット」を考えるにあたり,私たちのチームが大事にしたのは歴史だった。30年は遠い未来であり,そこに至るまでの間の期間での出来事も重要になってくる。 そこで年表を作成し,現在から30年先までどのような変化が起こり,そこで生きる人々にどのような影響を及ぼすかを考えていった。
ミライのエンタメガジェット
コンセプト
私たちが製作したのは,With AI Land という,利用者に寄り添うパートナー AI ロボットだ。 ここ1年で AI 関連技術は急速に進化を遂げた。それに伴いレコメンデーション(おすすめ機能)が進化し,人間はより自分の世界に没頭していくという未来仮説を立てた。 そこで,人間と人間のかかわりによる反応を起こすデバイスとして企画した。
(以下,将来の技術を以て実現したいものとする)
人と人が近くにいるとき・すれ違うときなどに,互いのデバイス同士が通信する(某ゲーム機のすれ違い通信をイメージしてほしい)。 この通信には個人の感情値や好みなどが含まれている。 これらのパラメータをもとに人同士のマッチングが行われ,何らかの良い影響を与えると演算されたとき,人と人の間の交流に結び付ける手助けをしてくれる。
これらの一連の処理は With AI Land 上で行われる,エッジコンピューティングであるため,個人情報の保護の観点からも有利である。
という想像である。
ソフトウェア
クラウド側のソフトウェアは T 氏(仮)が担当した。 詳しくはわかっていないが,Stable Diffusion と LangChain を利用したアプリケーションを AWS 上に構築しているようだ。 感情値をベースに,感情を表現する画像や,他者とのメッセージを生成している。
ハードウェア
外装は,市販のぬいぐるみを利用した。
(手に入らなかったら,全部自作してた)
中の綿を一部抜いて,タミヤのユニバーサルアームでベースを構成し,ビスとホットボンドでサーボと固定した。
電子工作
全体制御として,Raspberry Pi 3B を利用した。 Raspberry Pi を採用した理由としては,
- クラウド側との連携や画像処理が,(Arduino と比較して)Python のほうがで容易である
- 各種デバッグが利用しやすい
がある。
また,感情画像の表示用に SPI 接続の液晶ディスプレイを,首と肩の動作にサーボモータを搭載した。
感想とか
ハードウェア製作について
- 機材関係
- 馴染みのない土地で,部品調達や作業環境等もあまりわかっていなかったこともあり,様々な機材を持ち込んだ。
- 詳しくは他記事にて。
- 会場には以下の機材を用意してもらった
- ハサミ・カッター
- ドライバー
- はんだ付け用品一式
- 安定化電源
- 5万円の制約があるため,マイコンや Raspberry Pi などの高額な部品は,ハードウェア担当の持ち込みで行うとしていた。
- 構造設計について
- メーテレさんから,3D プリンタやレーザーカッタなどが利用できるものづくり.nagoyaさんを利用できるように準備されていた
- これらは,初見で使うにはコストの高い機材である・24時間は CAD を回して試行錯誤するには全く足りない点があるため見送った
- タミヤのユニバーサルアーム最高!
- 電子部品
- 名古屋にある電子部品関係のお店は以下の2つがある
- ボントン
- 大須商店街にある
- モータやディスプレイなどのインタラクションに使える部品があった
- I2C などで比較的簡単に利用できる部品は少なく感じた
- マルツの名古屋営業所
- ちょっと遠いから,利用は見送った
- ボントン
- 名古屋にある電子部品関係のお店は以下の2つがある
- ネットワーク
- 会場では番組収録の機材があるため,Wi-Fi の環境(特に2.4GHz)がシビアであった
- USB 接続の Wi-Fi 子機を購入したが,WiFi6(AX) 機器チップが Raspberry Pi に非対応だった
- 深夜に dkms でビルドするも,動かず
古い枯れた機材は重要
- モバイルバッテリの横に,テザリング状態を有効化したスマホを置いて,インターネットに接続した
チームについて
- ハッカソンで10人チームは初めてだったし,今後もないだろう(笑)
- ブレインストーミングでは,様々なアイデアが出てきて興味深かった
- 本番でも,ハードウェア・ソフトウェア・アイデアと分担できたことで,30年後の世界観を徹底的に作りこむことができた
リンク
- 公式サイト:https://www.nagoyatv.com/hackathon-electricsheep
- 予告編:https://www.youtube.com/watch?v=Ek4PFpkBbYU
- 本編:https://www.youtube.com/watch?v=fbxnJkiEdk0